テナントビルの共用ごみ置き場|オーナーとテナントの責任の分かれ目|岡山市
テナントビルの共用ごみ置き場は、場所はみんなで使っていても、ごみの処理責任は「出した事業者」ごとに分かれています。各テナントの営業や事務で出たごみは、そのテナントが排出事業者です。一方で、置き場を用意する・共用部分を清潔に保つ・共用部分から出るごみを処理する、といった建物側の役割は、オーナーや管理会社の側で受け持つ形にしておくと分担が明確になる部分です。
この記事では、共用のごみ置き場で「どこまでがオーナー(管理会社)で、どこからがテナントなのか」を、廃棄物処理法と岡山市の条例、国や自治体の公表資料をもとに整理します。置き場そのもののつくり方(分け方・動線)は事業所のごみ置き場のつくり方|資源物を分けて置く場所と動線で解説していますので、本記事は「責任の分かれ目」に絞ります。一般廃棄物と産業廃棄物の両方の収集運搬業許可を持つコウノ産業が解説します。
排出事業者は「そのごみを出した事業者」=各テナント
出発点は、廃棄物処理法第3条第1項です。
「事業者は、その事業活動に伴つて生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理しなければならない。」
岡山市の条例(岡山市廃棄物の減量及び適正処理に関する条例)も、第5条第2項で「事業者は,その事業系廃棄物を自らの責任において,適正に処理しなければならない。」と定めています。テナントとして入っている飲食店・物販店・事務所・クリニックなどは、それぞれが自分の事業から出たごみの排出事業者です。ビルのごみ置き場に置いたからといって、テナントの処理責任がオーナーに移るわけではありません。
この点は、産業廃棄物については国(環境省の通知。後述)や自治体も明言しています。東京都環境局は、よくある質問の中で、複数のテナントが入っているビルの産業廃棄物について次のように回答しています。
「ビルの共有部分からの廃棄物はビルの所有者等(所有者又は占有者でビルの運営権限を有する者)、テナントの事業活動により排出されたものは、各テナントが排出事業者になります。」
大阪市も、ビル管理会社がテナントに代わって産業廃棄物の委託契約を代行する場合について「廃棄物の処理責任はあくまでも、個々のテナント会社にある」としています。
共用部分から出るごみは管理する側のごみ
反対に、オーナーや管理会社が排出事業者になるごみもあります。共用廊下やエントランスの清掃ごみ、植栽の手入れで出た枝葉、管理事務所の書類など、建物の管理そのものから出るごみです。東京都は上のとおり「ビルの共有部分からの廃棄物はビルの所有者等」とし、大阪市も産業廃棄物について「ビルの共用部分から発生する産業廃棄物(し尿を含まないビルピット汚泥等)は、ビルオーナーが排出事業者になります。」と注記しています。
共用の置き場には、テナント各社のごみと管理側のごみが並ぶことになります。まずは「どのごみが誰のものか」を分けて考えることが、責任分界の第一歩です。
オーナー・管理会社に求められていること
ごみの処理責任はテナントにあっても、建物の側にも法令上の役割があります。岡山市の条例と国の法律から、主なものを挙げます。
▶ 保管場所の設置(岡山市条例第37条)
第1項は「事業用建築物の所有者等は,当該建築物又はその敷地内に,事業系廃棄物及び再利用の対象となる物の保管場所を設置するよう努めなければならない。」と定めています(努力義務)。第2項は、事業用大規模建築物を建設しようとする者に、規則の基準に従った保管場所の設置と、あらかじめ市長への届出を義務づけています。
▶ 建物から出るごみの減量と適正処理(同第34条)
「事業用の建築物の所有者又は占有者(以下「事業用建築物の所有者等」という。)は,再利用を促進する等により,当該建築物から排出される事業系廃棄物の減量及び適正な処理を図らなければならない。」
ここでいう「所有者等」には、オーナー(所有者)だけでなく、テナント(占有者)も含まれます。条例はどちらか一方に役割を割り振っていないため、建物全体としてどう分担するかは、当事者どうしで決めておく必要がある、というのが当コラムの整理です。
▶ 大規模な建物の計画書と管理責任者(同第35条・第36条)
事業用大規模建築物(大規模小売店舗、または事業の用途に供される部分の延べ床面積が3,000平方メートル以上の建築物など。岡山市の規則第21条で定義)の所有者等は、事業系廃棄物の減量に関する計画書の提出と、廃棄物管理責任者の選任・届出が求められます。制度の中身は岡山市の事業系ゴミ減量義務とは?、管理責任者の実務は廃棄物管理責任者の選任ポイントと社内実務をご覧ください。
▶ 建物の清潔の保持(廃棄物処理法第5条第1項)
「土地又は建物の占有者(占有者がない場合には、管理者とする。以下同じ。)は、その占有し、又は管理する土地又は建物の清潔を保つように努めなければならない。」
主語は「占有者」なので、テナントも自分が使っている範囲の清潔を保つ立場にあります。岡山市条例第42条も、土地や建物を占有・管理する者に、周囲の清潔を保ち相互に協力するよう努めることを求めています。
このほか、店舗・事務所などの用途に使う部分の延べ面積が3,000平方メートル以上の建築物(特定建築物)では、建築物衛生法(ビル管理法)第4条第1項により、維持管理について権原を有する者が建築物環境衛生管理基準に従って維持管理をしなければなりません。国の基準(平成15年厚生労働省告示第119号)には、廃棄物の貯留設備などの定期点検や、「廃棄物の保管設備の周辺等特にねずみ等が発生しやすい箇所」の調査が含まれています。特定建築物や事業用大規模建築物に当たらない小さなビルでも、上に挙げた条例第34条・第37条第1項・第42条と廃棄物処理法第5条第1項の役割は、建物の規模にかかわらずかかります。
また、置き場へ運ぶ途中の廊下や階段にごみを仮置きすると、消防法上の避難の支障になることがあります。この点は事業ごみの搬出経路と回収の可否で詳しく解説しています。
共用ごみ置き場の責任分界の目安
法令の役割を実務に落とすと、次のような分け方が目安になります。ただし法律が細部まで割り振っているわけではないため、実際の分担は賃貸借契約や管理規約・使用細則の定めによります。
| 項目 | 主に担う側と考え方 |
|---|---|
| 置き場の設置・位置 | 建物や敷地の使い方に関わるため、オーナー・管理会社が担うのが実務上わかりやすい部分です。条例第37条の努力義務の対象は所有者・占有者の両方です。 |
| 置き場の清掃・施錠・害虫対策 | 共用部分の管理として、管理側で受け持つ形にしておくと分担が明確です。各テナントは汚さない出し方で協力します。 |
| 分別と袋・容器への収納 | 各テナント。条例第21条第3項は「事業者は,事業系一般廃棄物を適正に分別して排出しなければならない。」と定めています。 |
| 収集運搬業者との委託契約 | 原則として排出事業者である各テナント。まとめる場合の注意点は次の章。 |
| 共用部分から出るごみ | オーナー・管理会社(排出事業者として自ら委託)。 |
| 誰のものか分からないごみ | あらかじめルールを決めておく項目。放置すると置き場全体が汚れ、回収にも支障が出ます。 |
トラブルになりやすいのは、最後の「誰のものか分からないごみ」です。回収業者は、契約している事業者のごみだけを回収します。ほかのテナントのごみや持ち主の分からないごみは、契約外のため置き場に残ってしまいます。置き場の区画や容器をテナントごとに分けて表示する、袋に事業所名を書くルールにする、といった工夫で、持ち主が分からないごみはかなり減らせます。なお岡山市条例第44条は、土地を占有・管理する者に、みだりに廃棄物が捨てられないよう適正に管理することを求め、捨てられた廃棄物は「自らの責任で処理しなければならない」と定めています。置き場のある敷地を管理する側が、この規定に当てはまる場合があることも踏まえておいてください。
クリニックが入るビルでは、注射針や血液の付いたガーゼなどの感染性廃棄物にも注意が必要です。これらは特別管理廃棄物にあたり、ほかのごみと区別して保管し、その廃棄物を扱える許可を持つ業者に委託します。共用の置き場にほかのテナントのごみと一緒に出すものではありません。区分の考え方はクリニック・歯科医院の事業ゴミ処分方法をご覧ください。
ビルでまとめて回収を頼むときの注意点
「テナントごとに業者と契約するより、ビルでまとめたほうが効率がよい」という声はよく聞きます。回収の曜日や時間をそろえられ、置き場も整いやすくなるからです。ただし、まとめ方には押さえておくべき線があります。
産業廃棄物は「契約は各事業者の名義」が原則
産業廃棄物の委託は、書面による契約が必要です(廃棄物処理法施行令第6条の2第4号)。テナントビルについて、環境省の通知(平成23年3月17日「産業廃棄物管理票制度の運用について」)は、ビルの管理者等がテナントの産業廃棄物の集荷場所を提供し、適正に回収・処理されるシステムが確立している場合には、集荷場所の提供者がマニフェストの交付等の事務を行ってもよいとしています。そのうえで、次のように念を押しています。
「なお、この場合においても、処理責任は個々の事業者にあり、産業廃棄物の処理に係る委託契約は、事業者の名義において別途行わなければならないこと。」
東京都は、ビルの所有者等が各テナントから委任状による委任を受けている場合には、各テナント分も含めて一括して契約できるとしています。大阪市は「基本的には代理人による契約締結は認められるものではありません」としたうえで、ビル管理会社等が集荷場所を提供し排出管理を共同で行っている場合に、委託契約の代行やマニフェスト交付の代行を「例外的に認めております」としています(委任状が必要)。ただしどちらも、排出事業者としての責任がテナントから移るわけではないと明記しています。この運用は自治体の案内であり、岡山市内で同じ形をとれるかは、事前に岡山市の担当課(産業廃棄物対策課)へ確認してください。
産業廃棄物の収集運搬を委託する相手は、原則として産業廃棄物収集運搬業の許可を持つ業者です。一般廃棄物の許可だけを持つ業者には委託できません。また、産業廃棄物を引き渡すときは、そのたびにマニフェスト(産業廃棄物管理票)を交付するのが原則です。仕組みはマニフェスト(産業廃棄物管理票)とは?で解説しています。
事業系一般廃棄物は「岡山市の許可業者」へ
紙くず、飲食店の調理くず・食べ残しなどの事業系一般廃棄物の収集運搬を委託する場合は、市町村長の許可を受けた一般廃棄物収集運搬業者に委託します(廃棄物処理法第7条第1項)。岡山市のQ&Aは「岡山市内で発生する一般廃棄物については、岡山市の許可を持った業者でなければ、取り扱いができません」と明記しています。倉敷市など岡山市以外にあるビルでは、その市の許可を持つ業者に委託します。産業廃棄物の許可だけを持つ業者には、事業系一般廃棄物は委託できません。ビルでまとめて頼む場合も、この許可の確認が出発点です。
なお、事業系一般廃棄物の委託について、テナントビルでの一括契約の扱いを示した国や岡山市の公式な案内は、2026年9月時点で確認できませんでした。一般廃棄物の委託には産業廃棄物のような書面契約の定めはありませんが、ビルでまとめて回収してもらう場合でも、各テナントの処理責任(条例第5条第2項)がなくなるわけではありません。誰のごみを誰の責任で出しているのかが分かる形にしておいてください。ビルでまとめる形をとる場合は、事前に岡山市の環境事業課にも確認してください。契約書で確認したい項目は事業ゴミの委託契約書で確認すべき項目にまとめています。
住居と店舗が同じ建物のとき
1階が店舗で上が住居、というビルも多くあります。岡山市は「住居と店舗が一体であっても、事業系ごみを家庭ごみとして出すことはできません。」としており、リーフレット(令和7年3月発行)でも「住居と店舗が同じ建物の場合でも、家庭ごみと事業系ごみをわけて排出してください。」と案内しています。建物のごみステーションが近くにあっても、テナントの事業系ごみはそこへは出せません。岡山市は、事業系ごみを家庭用のごみステーションへ出すことについて「不法投棄とみなされ、法律違反になる場合があります」としています。
オーナーとテナントで決めておきたい5つのこと
責任分界でもめる多くのケースは、「決めていなかった」ことが原因です。入居時や置き場の見直し時に、次の点を書面(賃貸借契約の特約、管理規約・使用細則、ごみ置き場の利用ルール)に残しておくと安心です。
- 置き場の範囲と区画:どこに、どのテナントが、何を置けるか。資源物(古紙など)の置き場所も含めて決めます。
- 出す時間と回収の曜日:前日の夜から出してよいのか、回収当日の朝だけか。臭いや害虫、他テナントの迷惑に直結します。
- 清掃・施錠・鍵の管理:置き場の清掃を誰がどの頻度で行うか。回収業者が入るための鍵や暗証番号の扱いも決めておきます。
- 委託の形と費用負担:各テナントが個別に契約するのか、ビルでまとめるのか。まとめる場合の名義・費用の分け方を決めます。
- ルール違反や持ち主不明のごみへの対応:誰が確認し、どう処理し、費用をどう扱うか。退去時に残ったごみの扱いも含めます。
回収の頻度と置き場の広さは連動します。量から逆算する考え方は事業ゴミの回収頻度と保管量の決め方をあわせてご覧ください。
テナントビルの事業ごみはコウノ産業にご相談ください
テナントビルでは、飲食店の調理くずや事務所の紙くずといった事業系一般廃棄物と、プラスチック類・金属くずなどの産業廃棄物が、同じ置き場に集まります。一般廃棄物の収集運搬業許可は市町村長が出すもので、市ごとに必要です。
コウノ産業は、一般廃棄物収集運搬業(岡山市第4019号)と産業廃棄物収集運搬業の許可を持っています。事業系一般廃棄物と産業廃棄物の両方について、許可の範囲内で対応いたします。テナント様ごとのご契約はもちろん、オーナー様・管理会社様からの「置き場のルールをそろえたい」「回収の曜日を整理したい」といったご相談もお気軽にどうぞ。置き場の場所や搬出経路を拝見したうえで、回収の段取りをご提案します。
出典:廃棄物の処理及び清掃に関する法律・同施行令、建築物における衛生的環境の確保に関する法律・同施行令(いずれもe-Gov法令検索)、岡山市廃棄物の減量及び適正処理に関する条例・岡山市廃棄物の減量及び適正処理に関する規則(岡山市例規集)、環境省ホームページ「産業廃棄物管理票制度の運用について(通知)」(平成23年3月17日)、東京都公式ホームページ(東京都環境局)「よくある質問 基本編」、大阪市ホームページ「産業廃棄物に関するよくある質問」、厚生労働省ホームページ「空気調和設備等の維持管理及び清掃等に係る技術上の基準」(平成15年厚生労働省告示第119号)、岡山市ホームページ「事業系ごみの適正分別・適正処理について Q&A」、岡山市ホームページ「事業系ごみと資源の分け方」、岡山市ホームページ「事業系廃棄物減量計画書等について」、岡山市リーフレット「事業系ごみの分け方・出し方」(令和7年3月発行)。本記事では、これらの内容をコウノ産業が要約・編集して紹介しています。内容は2026年9月時点のものです。制度や運用は変わることがありますので、最新の内容は各機関の案内をご確認ください。
